愛川町の天然記念物に“八菅山・尾山耕地・中津川周辺の里山環境・景観”を指定 する旨の提案


 

 愛川町教育委員会 御中  

 

時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 

 さて、生物多様性条約の締約国である日本は、20023月に新・生物多様性国家戦略を策定し、

その中に現状の3つの危機、4つの理念、3つの目標、7つの提案を示しています。

 

 提案は5年の計画期間内にすみやかに着手し、着実に推進しなければならないとして

1・絶滅防止と生態系の保全 2・里地里山の保全 3・自然の再生 4・移入種対策

5・モニタリングサイト1000 6・市民参加・環境学習 7・国際協力 をあげ、その中でも、1,2について次の様に明記されています。

 

1.       絶滅のおそれのある種については、生息環境の改善や増殖などによって、その個体数を回復させるための取り組みをさらに推し進め、また身近にみられる種が絶滅に向かわないよう、地域指定などの予防的対策を進める。

2.       水路やため池、里山林や田畑など、人間と自然のかかわりがつくり出した変化に富んだ自然環境をもつ里地里山は、絶滅危惧種の5割が生息する生物多様性のうえで重要な地域である。

 

以上の提案を受けた愛川町の緊急課題として、”尾山耕地周辺の里山環境・景観の保全”があります。2000年の秋に尾山耕地において、国のレッドデータ種の中でも絶滅が危ぶまれる水生昆虫の一種であるイトアメンボ科イトアメンボの生息が確認され、県内外の学会を代表する学識経験者を含む専門研究者からもこの地域の里山環境保全への強い要望が寄せられています。

 

その要点としては、

・イトアメンボ科イトアメンボは、かつては関東地方でも広く分布していたが、全国的に衰退は著しく、最近の知見では愛川町を除いては、西日本の一部の府県でしか生息が確認されていない。環境省のレッドリストの中で絶滅危惧U類、神奈川県では絶滅種。

 

・コオイムシ科コオイムシも尾山耕地に生息するが、全国的に衰退が著しく国の準絶滅危惧種。神奈川県内での生息状況は、愛川町を除いてはほとんど絶滅状態。

 

・その他多くのレッドデータ種が生息することは、尾山耕地とそれを取り巻く地域全体の生態系がきわめて多様であることを意味している

 

・このような里山環境が全国的に急速に失われてしまった現在、この地域は全国レベルで貴重であり、その全体を保全することが望まれる

 

・尾山耕地は、県指定天然記念物の「八菅山の樹林」、町の風致地区指定の雑木林、中津川に挟まれ、きわめて恵まれた景観と自然環境を有し、里山を象徴する地域である

 

・この地域のすぐれた里山環境を後世に引き継ぐことが、長い目で見た場合、愛川町のきわめて大きい財産になる。

 

・湿地環境として学術的に極めて貴重であり、その将来にわたる保全は、国の生物多様性保全政策にも関わるほどの問題である。

 

・県レベルで重要なばかりでなく、国レベルでも天然記念物に値するほど重要なものである。

 

以上の指摘のように、学術的にも重要な “八菅山・尾山耕地・中津川周辺の里山環境・景観”を天然記念物としてご指定いただくよう切に要望いたします。

 

   20047日          あいかわ自然ネットワーク事務局 大木悦子



教育委員会 回答 平成16年7月21日




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