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2007/6/16(土)01:13 - おおきえつこ - 624 hit(s)
火ぼりと魚すくい http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/33-2.jpg
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角田には山すそから何ヶ所も清水が湧き出して、集落の中をいくすじもの川になって流れていました。そして人々は川に沿って家を建て、川端に水場をつくり、米をといだり、食器を洗ったり、洗濯をしたりしました。ですから川のいたる所に水場がありました。水場には簡単な柵が造ってあり、一つの水場を三、四軒で共同で使っている所もあり、よくおばさん達が世間話をしながら洗い物をしていました。またこの川で水車を回し、米を搗(つ)いたり粉を挽(ひ)いたり、生糸を撚(よ)ったりする家がたくさんありました。
こうして川は人々の生活に欠く事の出来ない大事な役をして、川下に行って田の中に流れこんで稲を育て、最後に中津川に合流しました。川は人間に大きな恵みをあたえてくれたばかりか、美しく澄んだ水はたくさんの魚やトンボ、蛍、等々の生きものを育ててくれました。隣りのおばさんが、うどんをざるに入れて川に冷しておいたら、大きな鮎がざるの中に飛び込んでいたと、喜んでいろりで焼いていた事があります。いまの角田では考えられない事です。
僕は学校から帰るとよく魚すくいに行きました。ざるか、ぶってを持って、川に入って足でぶってやざるの中に魚を追い込んですくいあげるのです。フナ、ドジョウ、ナマズ、ハヤ、どうかするとウナギの子供がすくえることもありました。他にイシダ、オカマショウ(ホトケドジョウの方言)などは、あまりたくさんいるので取らずに逃がしました。はだしで川に入ると、足の下にイシダがもぐり込んで、足のうらがむずむずくすぐったくなるのです。田に入る細い溝には小さな魚が一杯いて、溝から田に落ちこむ水の落ち口に、オカマショウやオタマジャクシがまっ黒に盛りあがってはねていました。
夜は「火ぼり」という魚とりをしました。棒の先に針金でつくったかごをつるし、それにヒデという松の木の油をふくんだ部分の切れ端を入れて、火をつけるとよく燃えあがって明るいたいまつになります。その明りで田植えの済んだばかりの田の中にねむっているようにじっとしているウナギやナマズ、フナ等を見つけて、ブッターキという道具(棒の先に木綿針を櫛のように並べて植え込んだもの)で勢いよくふりおろして、魚を刺して取ります。
田植えがすんで少したったころ、友達とさそい合って火ぼりに行きました。暗く広いたんぼの向こうに真っ黒な山影があり、山すその闇の中をたいまつの火があちこちにうごめいて、そばには蛍の小さな青い光がいきをするようにまたたいて、ほんとに夢のような美しい初夏の夜でした。
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