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2007/6/15(金)00:38 - おおきえつこ - 593 hit(s)
鼻取り http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/33-1.jpg
その頃の村の人達は米や麦や野菜をつくったり、蚕を飼って生糸をつくって暮らしを立て、取れた大豆や麦を使って味噌、しょう油まで自分の手で造り、自給自足の生活をしていました。
五月、六月頃は蚕が大きくなり、田植えや麦刈り、お茶つみと、村中目の回るような忙しさです。子供は皆忙しい家の仕事を手伝いなさいといって、村の小学校は農繁期休校というお休みになりました。
その頃の小学生は赤ちゃんの子守りをしたり、畑に出てお手伝いをしたりしました。それは仕事がきつくて辛いこともありましたが「自分もこれだけ役に立つんだぞ」と、心の中に誇りを持つ事が出来ました。
今日は隣りの家に頼まれて鼻取りです。馬鍬(まんが)を引いた馬の轡(くつわ)に手綱と竹竿をつけて田の中を平均に耕せるように馬を上手に歩かせる仕事です。足が田のぬたに膝までもぐり込んで歩くのが大変です。馬が立ち止ったりすると、竿の先で馬の轡の付いた部分をコツンとつっ突きます。馬は痛そうに首を上下に振り、恨めしそうな目で僕を見ます。可哀相だけど仕事です。でもまだ小さかった僕は大きな馬に怒ったような目で見られると恐くもありました。
一生懸命働いて午後三時頃からおこじゅう(三時のおやつのこと)がとどきます。たいていさつま芋や八ツ頭のふかしたものとか、うどん粉を練って焙烙(ほうろく)で焼いた焼きもちなど粗末な食べものですが、うんと働いた後汗を拭きながら食べるおこじゅうの味は目がさめるようにおいしいと思いました。
馬に付いた竹竿をはずして休ませておいた馬に、おいしそうな草を取って来て「さっきはかんにんな」と心の中で思いながらやると、馬もおいしそうに食べて仲なおり出来たように思えました。一休みして夕方まで働きます。
七月十五日は馬鍬(まんが)洗(あら)い(まんがあれえ)と言って馬鍬を洗って田植えが無事に済んだお礼のお祭りの日です。僕は鼻取りを頼まれた人々からお礼のお金を一日三十戦から五十戦もらい、そのお金を持って自転車で十二キロもはなれた厚木の町に行き、ほしくてたまらなかった絵の具やスケッチブック、ハーモニカなどを買って帰りました。
七月の暑い暑い夕方、鼻取りをして働いた田んぼから青田を波うたせて吹いて来る風に当たって吹いたハーモニカの音色は、心が洗われるように涼しく感じられました。
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