前の画面〕 〔クリックポイント〕 〔最新の一覧〕 〔全て読んだことにする〕〔全て読んだことにして終了〕 〔終了

173 re:流域シンポジウム 豊かな生きものを育む農法〜尾山耕地の事例発表内容 
2007/12/20(木)22:56 - 大木悦子 - 2580 hit(s)

引用する
現在のパスワード


流域シンポジウム報告・続き「豊かな生きものを育む農法〜愛川町の田んぼ生きもの調査から〜」東海大学教養学部北野研究室の松村和音さんと当会から大木が発表。
当日事例発表のパワーポイントはこちらから http://aikawasizen.net/07rsinpoai.pdf

シンポジウム実行委員会から農業関連事例発表として、水質と農法の関わりの説明を依頼されていた為、前段で「田の虫図鑑・コウノトリ育む農法・冬期湛水不耕起栽培等の各種資料によると、カエルやクモ・トンボなどは害虫をたくさん食べてくれるので、豊かな生きものを育む農法で耕作された生態系の健全な水田は、農薬を使う水田よりも害虫が少なく、結果的に等級の高いおいしい米を作り、水質を良くして良好な循環をつくるといえる」とまとめた。

次に、生きものたちを育む農法・環境事例として、愛川町尾山耕地と生きもの調査を紹介。
多様な里山環境に育まれて、私達がこれまで観察できた絶滅危惧種の生きものたちは46種(鳥類・哺乳類などは除く)。昨年、今年の調査で、益虫のトンボは健全種を含めると30種余りとわかった(過去の記録は除く)。
2002年から3年間(モートンイトトンボは4年間)の水生昆虫3種・陸生昆虫3種の分布・生態を調査。モートンイトトンボは、ヤゴの羽化殻や近くに止る羽化直後の未成熟個体を調べる事で、羽化のピーク時期や繁殖場所を推定。湿った水田、抽水植物が畦際にあることなどが繁殖環境条件と考察した。分布は横断する農道から上流側と下流側に大きく分かれた。調査結果を基に、主に水生昆虫(さらにトウキョウダルマガエルやコウライイチイゴケなども加えて)について保全すべき重要区域を区分。今後、この生息環境の消失・変化に対して、代替・回避措置が必要となる。

2006年6月モートンイトトンボの羽化ピーク時期に、東海大学北野研究室の協力により、一日かけて全水田の一斉調査を行う。その結果、隣り合った水田でありながら観られる数が大きく違う事がわかった。多く観られた水田の農家の方に耕作方法を伺い、繁殖環境と農法との関わりが見えてきた。2007年6月も同様の調査を行った。
2007年は東海大4年生の松村さんとトウキョウダルマガエル:県の絶滅危惧U類の移動調査(個体識別の為、捕獲場所・口や背中周りの模様の写真・体重・体長・性別・再捕獲の有無等記録、奇形と観られる個体もいた)を中心に、複数の農法の聞き取り調査・土壌中の生きもの調査などを行った。

昨年と今年の調査については松村さんが発表。
モートンイトトンボの多い水田は、育苗時から収穫まで農薬を使わず、田植え後、藻が多い所にのみ農薬使用(2007年は不使用・自然に消えるとのこと)、化学肥料もかなり少なく、切りワラ・モミガラ・堆肥を入れて20年余り耕作されてきた。ミジンコなど小さなヤゴの餌も豊富な田んぼには、他の生きもの達も多い。とはいえ、同じ農法で生きものの少ない水田もあり、繁殖環境条件は農法を含む複合的な要因が考えられる。他の農家の方の聞き取りでは、無農薬であっても糠やレンゲ・化学肥料(少量)で耕作した水田では、モートンイトトンボは多くないことなどもわかった。

まとめ(豊かな生きものを育むために)
○尾山耕地生物多様性保全の課題:ヘイケボタルの繁殖環境に影響する光環境対策。
愛川町環境保全関連計画
環境基本計画:重点プロジェクトに掲げられたホタル・トンボの生息環境の維持・確保。
農村環境整備計画:生物の生息環境に配慮した用排水路整備促進。休耕田・農業用水路を活かした湿地ビオトープづくり等が掲げられている(実施計画不明)。
○神奈川県水源環境税をめぐって、
・水源環境保全・再生が目的の為、生態系に配慮した農業用水路改修は交付金対象だが、コンクリート3面張りは対象外。愛川町は寒川取水堰上流に位置し、交付金対象地域。現在改修工事中の尾山水路は、コンクリート3面張り。交付金予算は無い。
・トウキョウダルマガエルやドジョウなどに配慮した水路を考える
現状の尾山水路:トウキョウダルマガエルは指に吸盤が無く、深く垂直な水路は登れない、ドジョウなどは水が止ると逃げ場がなく、水田との行き来も出来ない。
○協働して取り組む仕組みに学ぶ
・福岡県環境支払い制度 県民と育む農のめぐみモデル事業:国に先駆けて農家自身の減農薬・生き物調査などを対象に補助。生きもの目録づくり:田んぼの生物指標作成
・小田原メダカ生息環境保全活動 県道建設に伴う水田環境保全対策を専門研究者・市
民・行政・事業者等が協議検討・水田魚道・多自然型水路等に取り組む:水源環境税
交付金対象事業として水路整備に1億2千万円余り(H19年度予算)
・全農・生協・NPO協働の田んぼの生きもの調査
・農水省:今年度から「農地・水・環境保全向上対策」・昨年末、有機農法推進法

*田んぼの生きもの調査を農家の方々や子供達と一緒に!!
尾山耕地にも高齢化の課題があります。今の環境を支えてくださる農家の皆様に感謝しつつ、次世代に農のめぐみを伝えるために、協働して里山環境保全・再生に取り組める仕組みづくりを考えていきたいと思います。
今年は草刈作業など、調査の日にわずかにお手伝いしました。少ない人数で取り組んでいますので、関心ある皆様のご参加をお願いします。


〔ツリー構成〕

No.167 11月23日桂川相模川流域協議会シンポジウム 愛川町文化会館にて  2007/10/15(月)18:26 大木悦子 (2178)
 └ No.171 re:流域シンポジウム ご参加ありがとうございました(報告)  2007/12/9(日)22:38 大木悦子 (2268)
 └ No.173 re:流域シンポジウム 豊かな生きものを育む農法〜尾山耕地の事例発表内容  2007/12/20(木)22:56 大木悦子 (4362)
 └ No.174 re:流域シンポジウム 事例発表のカエルの奇形について  2007/12/20(木)23:21 大木悦子 (2571)

前の画面〕 〔クリックポイント〕 〔最新の一覧〕 〔全て読んだことにする〕〔全て読んだことにして終了〕 〔終了

※ 『クリックポイント』とは一覧上から読み始めた地点を指し、ツリー上の記事を巡回しても、その位置に戻ることができます.