朝日新聞 2000年(平成2年)日 土曜日


愛川の水田にイトアメンボ
絶滅種の生息確認
(写真:愛川町で生息が確認されたイトトンボ)

 県レッドデータブックで絶滅種とされている昆虫イトアメンボが愛川町で生息していることが、八日までに確認された。全国的にも生息を確認されているのは九州など西日本の数カ所に限られているという。昆虫の専門家からは「生息地は貴重な環境として保全してほしい」との声が上がっている。

 イトアメンボはイトアメンボ科の昆虫で、胴体の良さが一センチ余り。一九九五年に発行された県レッドデータ年物調査報告書では絶滅種とされている。環境庁のレッドリストでも絶滅危ぐU類とされている。
 今回、イトアメンボが見つかったのは愛川町の八菅山一帯の森林と中津川にはさまれた水田地帯。点在する休耕田が湿地帯のようになっている。
 これまでに、県レッドデータブックで絶滅種とされたオグラヒラタゴミムシ(オサムシ科)、絶滅危ぐ種のアオハダトンボ(カワトンボ科)、コオイムシ(コオイムシ科)など貴重な昆虫が多数見つかっている。
 現場は、町道幣山・下平線の予定地にあたっている。全長二千三百メートル、幅十・二五メートルで、町は二〇一〇年度の完成を予定。
 住民からは「豊かな生態系を保全してほしい」とする陳情書が、千九百人余りの署名を添えて町議会に提出されている。
 イトアメンボを確認した埼玉大教育学部の林正美教授(昆虫分類学)は「一九六〇年代以降どんどん姿を消し、関東はもうダメだと思っていたので、今回の発見は非常に驚いた。環境の変化に敏感な生物なので、生息地は、ぜひ保全してほしい」と話している。


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(写真:愛川町で生息が確認されたイトトンボ) 愛川の水田にイトアメンボ
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