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2007/1/17(水)22:39 - おおきえつこ - (13234 アクセス)
画文集「三軒家むかし語り〜失われた農村と子供の原風景〜」から
(著者:諏訪部 晃 制作・発行:夢工房)
サイトバライ http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/22-1.jpg
お正月にはどこの家でも門松やしめ飾りを飾って祝いますが、七日正月が過ぎるとお飾りを取り払
っておきます。そして十四日になるとそれ等を集落中の家から道祖神の前に集めて焼き払います。
そのことを「せえとうばれえ」と言い、焼き払う時の火で繭(まゆ)玉だんごを焼きます。
一月の十五日は小正月とか十五日正月といって十三日にお餅を搗いて祝いますが、その餅と一緒に
繭玉というだんごをつくり、榊(さかき)の木を切って来てその枝の先に花の咲いたように沢山さして
神棚の前に飾っておきました。「今日はせえとうばれだぞっ」学校がひけるのを待って家にとんで帰
り、仕度をして道祖神に集まります。道祖神は、さす坂の中程に坂道の大きくカーブした所に石碑が
祭ってありました。
僕は友達と一緒になって、集落中から正月飾りを集め、急なさす坂を担いで運びあげます。とても
楽しい作業です。そして賽銭箱を持って家々を回ると、どこの家でも少しずつお金を入れてくれます。
それを大人に渡すと、そのお金でお供物とお神酒を買って神前に供えておきます。
さす坂が大きくカーブした道の真ん中に高い柱をたて、僕等子供達も一生懸命手伝って、正月飾り
と山から切り出した松や杉の枝を一緒に柱にくくりつけ、藁塚のような高い塔を造りました。これで
準備OKです。皆一度家に帰って、繭玉や五色の旗を持って、又、道祖神の前に集まります。五色の
旗とは、赤青黄緑紫白の色紙(いろがみ)を買ってきて貼り合わせ、細長い旗を作ってそれに奉納道祖
神と墨で書き、長い篠竹につけ、だんごを焼く時あがる炎や煙の上にさしだして振り回すと、旗に火
がつき燃えながら空に舞いあがります。旗を一番高く舞いあがらせた者は字が上手に書けるようにな
る、という言い伝えがありました。
日が西にかたむき、神前に供えてあったお神酒が大人にふるまわれ、お供物の菓子が子供達に配ら
れます。そしてあちこちの集落で「だんご焼きを始めるぞう」という合図ののろしの煙がたち登ると、
集落の人達が大勢集まってきて、正月飾りで造った塔に火が入りました。黒煙がもくもくとあがり、
煙の下から真っ赤な炎が噴き出しました。「ワアー」と声をあげて子供は一斉に旗を煙の上にさし出
して振ります。煙の上に出そうとそばへ寄ると熱い。「ワアーあちい」「おれの旗が燃えたぞう」
「やあーあがった、あがった」「おれのがたけえぞ」皆大騒ぎです。旗が燃えながら舞いあがっては
黒い紙の灰になって遠くへ飛んで行きます。塔が焼け落ちて真っ赤なおき火になると皆だんごを焼き
始めます。だんごを針金に数珠のように串ざしにして長い棒の先につるして火にかざす者、家で飾っ
てあったままの枝をかざす者、火の傍へ寄ると熱いので色々と工夫をこらして焼きます。「何だ、お
めえなあ、真っ黒焦げじゃねえかよう」「馬鹿、黒焦げを食うと虫歯にならねえんだぞ」「へえ本当
か」皆熱いので顔を真っ赤にして一生懸命です。
あたりがうす暗くなる頃までワイワイ言いながら焼いて家路につきます。燃え残りの杉や松の枝を
屋根に上げておくと火事よけのまじないになると言うので、拾って帰る人が大勢いました。
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└ No.120 画文集「三軒家むかし語り」 サイトバライ 2007/1/17(水)22:39 おおきえつこ (2802) |
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