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2007/2/5(月)00:06 - おおき えつこ - (13057 アクセス)
芋洗い http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/23-3.jpg
姉さんが「芋を洗っておきな、後でふかしてやるから」と言いました。小さな僕が一番いやな辛い仕事でした。四斗樽に里芋や八ツ頭を半分位入れてその上に水がかぶる位の水を川から汲んで入れて、絵にあるような道具で、樽の上にまたがってゴロゴロと掻き回しては何回も水を替えて洗います。大きな手桶で水を汲むのが重くて大変でした。
寒い日など着物が水に濡れると、手や足にひびやあかぎれが出来て血が出ます。でもふかしてもらう甘いさつま芋、また荒皮の上の方をちょっとむいて、キュッと押すと白い里芋の実がつるりと出て来て、それにしょう油をつけて食べるおいしさ。それにつられて一生懸命に洗いました。
もう一つ水汲みで大変なのは風呂の水汲みです。夕方風呂を沸かすのが僕の仕事で、三年生頃まで姉さんと二人で沸かし、四年生になってからは一人で沸かしました。川から手桶に水を汲み十メートル程運んで風呂桶に入れるのですが、未だ背が低くて台の上にあがらないと風呂桶のふちまで水を持ちあげられません。水の一杯入った手桶を胸の高さまで持ちあげるのに一苦労で、へたをすると胸から水に濡れてしまいます。手桶に水を入れて運ぶのに、一つだけだとバランスが取れず歩きづらいし、二つ持つと重くて手が抜けそうになる。しりをはしょってはだしにならないと手桶から水がこぼれてびしょびしょに濡れてしまいます。風呂桶に水を一杯にするには二つの手桶で七、八回運ばなければなりません。
水を汲み終わると今度は風呂の火燃しです。杉っ葉や小枝をたきつけにして太い薪に燃やしつけます。油断をするとすぐ火が消えてしまいます。薪の下によく風の通るように注意して火箸で灰をかき出したり、消えそうになると火吹き竹で吹いたり、太すぎる薪を鉈(なた)で割ったりします。
その頃の風呂釜は粗末に出来ていて焚き口のすぐ上に煙出しが突き出ていて、顔を高くすると煙が顔にかかってけむたくてたまりません。低くこごんで火を燃やさなければなりません。でも火が上手に燃えつくと暖かくて、水汲みで濡れた足や着物を乾かしながら美しい火の色を見ていると、色々な事が次から次へと思い出されて、まるで夢の世界へ引き込まれるような楽しさがありました。
湯が沸くと皆に「湯が沸いたよお」と知らせて、一番に風呂に入ってしまいました。
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