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2007/2/25(日)23:12 - おおきえつこ - 11870 hit(s)
三軒家の人達
だれも遊んでくれる人がなく、姉さんは奉公や学校に、兄さんは畑の仕事で忙しいので相手にしてくれません。だから僕はよく隣りの髭のおじさんの家やその隣りの家に遊びに出かけました。
「お坊は何が好きだ」「ツチだ」「何よ、ツチがかよう、泥は食えなかんべえ」「うんじゃあねえ!!ツチだ!!」「だって土だとせえたんべ」「うんじゃあねえツチだ!!」まだよく舌が回らなくて鮨と言えない僕を、しも隣りの兄妹が僕をからかって大笑いです(鮨と言っても稲荷鮨しか知らなかった)。三軒家の大人達はまだ赤ちゃんのような僕を皆で可愛がってくれ、僕は大人達の中で一人いばっていました。
隣りのおじさんは日当たりの良い縁側で日向ぼっこをしながら、何だか沢山丸い穴のあいた四角いキラキラ光るブリキ板のようなものを山のように積み上げて、一枚ずつ布でキュッキュッと磨いているのを、僕は縁側によりかかって見ていました。このおじさんは軒の目白の鳥籠をおろして目白にねり餌をやったり水を浴びせたりしていました。また二連発の鉄砲を出して来てピカピカに磨き、筒先を空に向けて撃つまねをし、片目をつぶると口の片一方の端がちょっと開いて、チョビ髭がピクピクと動きます。おどけてパッパアーン、パアーンと大きな声を出して僕をびっくりさせて笑います。
ある日おじさんが雉(きじ)を三羽程、網に入れて肩から背負い、鉄砲を担いで帰って来た事があり、見ると瑠璃(るり)、赤、紺と虹のように雉の羽根が輝いています。その羽根がほしくてたまらず、おじさんの後をついて行きましたが、羽根をくれと言う事が出来ませんでした。だっておじさんが猟に行ってやっと取って来たご自慢の大事な雉だったのですから。
大きくなってからこのおじさんは、蚕の蛾に産ませた蚕の卵を売る種屋さんだった事を知りました。縁側で磨いていた沢山の丸い穴の空いたブリキの板のようなものは、蛾(が)輪(りん)という蚕の蛾に卵を産ませる道具だったのです。
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