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2007/3/12(月)10:24 - おおきえつこ - (14783 アクセス)
留守番 http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/26-3.jpg
うちの前の畑の中の道を東の方に少し行くと、山の中に切り立った崖のような急な坂道があって、いく曲がりか曲がったその坂道をおりて行くと、下箕輪という集落がありました。
その坂道のおり口に立って見下ろすと、広い広い田んぼの中に木立に囲まれた藁(わら)ぶき屋根がぽつり、ぽつりと見え、春には菜の花やれんげの花がさいて、まるで黄色や紫や緑色の毛糸のセーターでも並べたようにきれいで、この坂の上まで花の香りがむせるように匂ってくるのでした。ときおり、けたたましく鳴く鶏の声や、大声で人を呼ぶ声まで聞こえてきたりします。田んぼの向こうは空色に霞んだ山の間を、中津川がひろびろと遠くのびて白くひかって見えました。
夕方になって姉さんがランプのほやを磨いたり、おそうじをしたりしてお父さんの帰りを待っていましたが、なかなか帰って来ません。淋しくなって姉さんは僕をおんぶして坂のおり口までいってみました。大きな声で歌をうたうと泣き声とまちがえてお父さんが急いで帰って来るかもしれないと言って、二人でうんと大きな声を張りあげてうたいました。
山の大きな松の木が風に吹かれてゴウゴウと泣き声のような音を立てて、伴奏をしてくれました。
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└ No.135 画文集から 留守番 2007/3/12(月)10:24 おおきえつこ (1018) |
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