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2007/5/7(月)12:28 - おおきえつこ - (12684 アクセス)
火打石とつけ木 http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/29-2.jpg
僕が四、五歳頃まで(大正十年頃)火をつけるのに火打石と火口(ほくち)を使って火をおこしていました。お父さんは腰にたばこ入れと火打石の道具の入った袋をさげていて、畑などでたばこを吸うときにキセルにキザミたばこをつめ、火口をその上にのせ火打石を鉄の刃のようなもので打つと、火花がちってキセルに火がつきました。
一服吸い終わると、そのキセルの火を手の上でころころ転がしながらキセルに新しいたばこをつめ、手の平の火をそのたばこにつけて又、吸いました。当時のお百姓さんの手は、強い労働のため手の皮が石のようになっていて、火をのせても熱くなかったのでしょう。手の平の火を子供心にびっくりしながら見ていた事を思いだします。
又、この頃ツケ木といって、杉や桧の薄い板(薄いボール紙位のあつさ)の一方の端に硫黄が塗ってありました。その板を細く裂いて火に近づけるとポッと火がつきます。ランプやかまどに火をつける時に、このツケ木で火をうつしました。この薄い板を利用して水車を作って遊びました。このツケ木も僕が十歳頃までありましたが、マッチが沢山出回って次第に使う人が少なくなりました。昭和十四、五年頃まで使っていたと言う人もありますが、今は全く見当たりません。
提灯 http://aikawasizen.net/cgi-topics/img/29-3.jpg
どうしてあんなに真っ暗な夜、あんなに遠くの所へ出掛けたのか、又、なぜお父さんが行ってはいけないと止めなかったのか、どうしてお父さんが提灯(ちょうちん)に火をつけてくれたのか、みんな分からない。ひょっとすると提灯に火をつけてもらって遊んでいるうちに、お父さんにだまって出掛けたのかも知れない。
僕は緑のトンネルのような桑畑の中の道をとぼとぼと歩いていました。ふり返って見あげると暗い空におばけのような桑の枝がくろぐろと揺れている。下箕輪(したみのわ)のたんぼから聞こえる蛙の鳴き声が空一杯に広がって、まるで空の星が一度におしゃべりをしているようでした。僕は提灯の火をみつめながら、こわくなんてないやと一生懸命頑張って歩きました。でも時々真っ暗な後ろをふり向きました。だれか後から来るような気がするからでした。
やっと姉さんがお手伝いに来ている熊坂さんの家にたどりつき、明るいランプのついた家の中に入って行くと、皆びっくりして姉さんを呼んでくれました。僕は急に元気になり、遠い夜道を一人で歩いて来たのが嬉しくて、うんといばりました。けれどもどうして家に帰ったのか、いくら考えても分かりません。きっと熊坂さんの家で寝てしまって、姉さんにおんぶされて帰ったのかも知れません。
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