「かながわの宝もの」 地帯に生息する昆虫類の保全に関する研究 報告書 (HTML化作業中B版)
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2002年(財)イオン環境財団助成事業 報告書

  「神奈川県・愛川町の尾山耕地における昆虫類の保全に関する研究」

                         2003年 5月

                      あいかわ自然ネットワーク


目次

第1章 はじめに

第2章 業務の概要及び経過  

        1 調査の目的
        2 調査の内容
        3 調査地域
        4 調査方法 

第3章 結果および考察    

       1 生息状況
     (1)分布状況
     (2)生息環境条件

第4章 保全対策       

      1 希少種対策
      2 保護上の課題    
 
資料
尾山耕地内の農道整備位置図(H15年度工事予定)
尾山耕地内の町道計画位置図
調査対象種の解説文
参考文献
写真 調査地域及び外観
         調査風景
        希少種の生息確認写真  
 *感想文

 

第1章 はじめに


 美しい ふるさとの 里山風景を次の世代に残したい
そんな想いで  八菅山 尾山耕地の生き物たち の くらしを
    そっとのぞいて  
         初めて知る 様々な いのちの いとなみ
 

 2002年、あいかわ自然ネットワークは、(財)イオン環境財団の助成をいただき、「神奈川県・愛川町の尾山耕地における昆虫類の保全に関する研究」に取り組みました。
 初めての調査活動を受け入れて下さった、尾山耕地の農業者の皆様、現地調査他にお力添え下さった専門研究者の皆様、ボランティアとしてご参加下さった皆様にお礼申し上げます。

 (財)イオン環境財団から引き続き2年目の助成をいただき、調査活動を行います。今回、1年目の調査活動のまとめを行いました。この結果を今後の調査活動の基礎とし、また、八菅山・尾山耕地・中津川周辺の里山環境保全に反映できるように取り組んで参ります。

調査研究活動に参加した会員・ボランティア(順不同)

衛藤佳功 佐藤誠三 菅原多美 豊田由美子 竹内やすこ 五月女芳子 
川嶋朋美 吉川久美子 吉川俊 吉川拓 吉弘 緑  小林 勝 大木悦子

 

第2章 業務の概要および経過 

1 調査目的
 
 昆虫類は全動物の70パーセント占めるといわれ,現在地球上で最も繁栄している動物である。それは世代交代が早いこと,体が小さいことから様々な環境に適応をとげてきたからである。したがってある地域にどんな昆虫が生息しているかを調べることによって,その地域全体の環境の多様性や環境の特性を把握することが可能になる。
 尾山耕地は,神奈川県愛甲郡愛川町の南東部に位置する八菅山山麓と中津川に囲まれた,南北に細長い水田(全長約800m・最大幅約150m)である。水環境が非常に貧困な神奈川県において,この尾山耕地には,国,県内からの絶滅が危惧されている数多くの昆虫類が生息している。「環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧種(VU)に分類されているイトアメンボ・同準絶滅危惧種(NT)のコオイムシをはじめ県の絶滅種とされていてるオグラヒラタゴミムシ・同絶滅危惧種のモートンイトトトンボ・アオハダトンボ・ハネナガイナゴ・コオイムシ・タマガムシ」などの生息が確認されている。特にイトアメンボについては,現在,国内で生息が確認されているのは,大分県と熊本県だけで,他には大阪府と山口県からの生息情報があるだけである。非常に危機的な状況である。     しかし,当該地域では東側の中津川の堤防に沿った町道計画と,西側の八菅山山麓に沿った水路沿いの農道整備が計画されており,これらの計画によって現在良好な水田環境に改変または消失する可能性の示唆される。早急に保全対策を講じる必要が生じている。                          本研究では,レッドデータ種の当該地域における詳細な分布状況,生態及び生息環境調査を実施し,それぞれの種がどのような水田環境を選好するのかを,研究結果に基づき科学的に解明する。その結果については,行政側との調整を図ってゆくうえでの材料とし,道路・農道計画に伴う生息環境の影響要因を極力軽減し,現状を踏まえ,今後の水田環境保全に役立てるこを狙いとする。
 さらに,この成果を様々な機会に展示・広報するすることにより,多くの方々に尾山耕地の生息・景観としての環境などの素晴しさを再認識していただくとともに,地域の生物多様性保全の重要性を知っていただくことを狙いとする。
 なお本研究は,イオン環境財団の助成金によって行った。 

2 調査内容

 1.現地調査 

(1)生息分布調査

 生息の分布が確認されているオグラヒラタゴミムシ,キベリマルクビゴミムシ,マメハンミョウ,モートンイトトンボ,コオイムシ,タマガムシなど希少種6種については,産卵,羽化,成虫期の4月から12月において,55回,述べ参加167人で現地調査を行い,分布状況,生態,日周行動などの把握に努めた。


(2)生息環境条件調査

 生息が確認されているモートンイトトンボについては,成虫が活発に活動する6月30日に1日,二人一組で現地調査を行い,休耕田に多数生息が確認された「実験区」と生息が確認されなかった「対照区」をランダムに抽出し,植生種類,被度,優占種,高さ,水域の有無,水温,深さなどの環境条件の把握に努めた。



3 調査地域

 愛川町は,神奈川県の北西部に位置し,西側に丹沢山系,北側に東京都八王市,境として津久井町に隣接している。東側に相模原市,南側に厚木市に囲まれた場所に愛川町が位置している(図2―1)。
 対象地の尾山耕地は,神奈川県愛甲郡愛川町の南東部に位置する八菅山山麓と中津川に囲まれた,南北に細長い水田(全長約800m・最大幅約150m)である(図2―2)。


 4 調査方法

  尾山耕地に生息している希少昆虫類のなかで、緊急に調査を実施し、保護対象が必要となる昆虫として、陸生昆虫のオグラヒラタゴミムシ、キベリマルクビゴミムシ、マメハンミョウ等の3種。水生昆虫のモートンイトトンボ、コオイムシ、タマガムシ等の3種、計6種、希少昆虫の生息場所、環境等を明らかにするために次の調査方法を用いた。 

(1)生息環境条件調査

 (水生昆虫/モートンイトトンボ)を調査対象として、5月から6月の初夏に尾山全体を調査し、主に休耕田において、成虫の発生場所の有無を調べ、生息確認地点「実験区」を8箇所,非確認地点「対照区」を5箇所を対象場所と定め,コロラード(1×1m)ランダムにを調査地に敷き詰め、範囲内の植生種類、被度、優占種、高さなや水域の有無、水温、深さなどを調べ環境条件を明らかにした。


 (2)生息調査

 (水生昆虫/タマガムシ・コオイムシ)を調査対象として、5月から10月 までの初夏にかけて、尾山全体を調査し、昆虫及び産卵場所幼虫の発 生場所を調べた。調査方法は、主に水田や休耕田を対象とし、網取り採集を行い、生息場所や生態,日周行動等について明らかにした。


(3)生息調査

 (陸生昆虫/キベリマルクビゴミムシ・オグラヒラタゴミムシ)を対象として、4月から9月までの春から秋にかけて、尾山全域の畦や土手等でベストトラップにより成虫を採取し(図4―2)、生息場所や日周活動等について明らかにした。


(4)生息調査

 (陸生・水生昆虫)を調査対象として、4月から12月までの春から冬にかけて、尾山全体を調査し、成虫及び産卵場所や幼虫の発生場所、越冬状況を調べた。調査の方法は、全体を網羅できるように水田や休耕田、畦などを踏査し目視で分布状況,生態、日周行動などについて明らかにした。

 

第3章 結果および考察


1.生息状況

(1)分布状況

 1-1  尾山耕地における生息状況

 尾山耕地において,4月から12月の間に55日間調査を実施し,オグラヒラタゴミムシ,キベリマルクビゴミムシ,モートンイトトンボ,コオイムシ,マメハンミョウ,タマガムシの6種を対象に生息状況を行った。

 その結果最も生息日数が多かったのは,コオイムシの38日で,5月下旬に初めて確認をした後,12月上旬までの間,毎月確認することができた。次に多かったのがタマガムシの20日で,5月下旬に初確認から12月初旬まで生息を確認することができた。モートンイトトンボは12日であった。コオイムシやがタマガムシと比べると確認日数が少ないものの,6月に集中して生息が確認されており,同種の特徴的な傾向が伺えた。その他,オグラヒラタゴミムシ,キベリマルクビゴミムシ,マメハンミョウ3種の生息日数は少ない傾向にあった(表3?1)。   


 1-2 対象昆虫の生息状況

 1)コオイムシ(成虫・幼虫・卵)
 尾山耕地における成虫は,広い範囲に比較的多く生息していることが確認された。確認された場所の環境は,水田,休耕地をほぼ同じ割合で利用している傾向が見られた(図3―2-1)。一方,幼虫は成虫と同じく比較的広い範囲に生息しているのが確認された(図3―2-2)。環境は,水田と休耕地を利用している水田での確認の割合が高い傾向であった。卵の状態での確認は少なく主に八菅山の山際に見られた(図3―2-3)。

 2)モートンイトトンボ
 モートンイトトンボの生息は,数ヵ所に分布しているのが確認された。なかでも特に休耕地の湿地と草地が混ざる環境に比較的多く確認することができた(図3―2-4)。その他,畦でも見ることができ,休耕地や畦といった湿地,草地環境は同種が好む生息条件であると考えられる。

3)タマガムシ
 タマガムシの生息は,上流,下流側に大きく2箇所に分布してるのが確認された。なかでも下流側の水田,休耕地の環境が比較的まとまっている場所で確認された。水田,休耕地の環境を利用していたが水田での利用が顕著であった(図3―2-5)。

4)マメハンミョウ
 マメハンミョウの生息は,4箇所と生息場所が少なく極地的な分布状況であった(図3―2-6)。 

5)キベリマルクビゴミムシ
 キベリマルクビゴミムシの生息は,5箇所と生息場所が少なく極地的な分布状況であった(図3―2-7)。

 (2) 生息環境条件

 2-1 モートンイトトンボの環境条件

 表3―2 実験区・対照区間での生息環境の比較
実験区(n=8) 対照区(n=5) 
種類数 10.9  8.4
優占種高(cm) 22.7 
( SD10.7/n=36)
35.9
(SD15.3/n=26)
範 囲 58―5.0  80―5.0
水系深(cm)  4.6
(SD3.8/n=38)
4.25
(SD1.7/n=24)
範 囲  13―1.0 8.0―2.0
有/無  7/1  2/3
水温(°c)  24.3 
(SD2.0/n=19)
25.7
(SD0.5/n=6)
範 囲 28―4.0 26.5―25

コロラードは100cm×100cmを実験区,対照区のそれぞれ13地点で実施した。(SD標準偏差/観察数n)

 表3―2は,実験区と対照区ごとに調べた結果をそれぞれの項目毎に数値として,示した。そのなかで有意に差が生じた項目毎に考察してみた。

 優占種の高さを比較した結果,対照区が35.9cm,実験区が22.7cmの値となり,その差は有意であった。範囲は対照区の茎の最も高い値が80cm実験区が58cmとその差が22cmで有意であったのに対し,低い茎の値はともに5cmと同じ値で顕著な違いは認められなかった。

 水系は,実験区の調査範囲に水が湛水状態の水田の湿地性環境が87.5%(7区)であった。土の状態,乾燥地環境が12 5%(1区)であった。一方,対照区の湿地性環境が40%,乾燥地環境が60%の値であった。実験区の値の方が湿地性環境を有意に傾向がみられた。水深は実験区4.6cmに対し,対照区は4.25cmであった。その結果,実験区が0.35cm深く有意な差は認められなかった。水温は,実験区が24.3度,対照区が25.7度で対照区の方が1.4度高かった。

 
 結果を整理し,モートンイトトンボの好む環境条件を考察すると次のようになる。
  1. 草丈の低い茎での平均値が22.7cmで,その範囲が5〜58cmを好む  傾向が顕著である
  2. 優占種を含む概ね11種類の植物が必要とされる
  3. 植物相の密度は比較的高密度の環境を好む傾向がある
  4. 休耕田の約8割の湿地環境を好み,乾燥地の環境を避ける傾向が顕著であった
  5. 実験区の水深は平均で4.6cm(範囲:最深13.0―最浅1.0cm)  の水深を好んでおり,対照区より0.35cm深かった
  6. 実験区の水温は平均で24.3°C(範囲:最高28―最低4.0°C))  の水温を好んでおり,対照区より1.4°C低い傾向であった。全体的に水  温が低温だった主な理由としては,水深が深かったことと,流水の休耕田が  多かったことが主な要因であると示唆される
 今後は,上記の1〜6の結果に基づき,明らかにされたモートンイトトンボの好む環境条件を当該地域に残すと共に,モニタリングを実施する。また工事や人為的な影響等考えられる場合には,他地域へ復元することも検討する必要がある。


2-2 対象昆虫の生活スタイル

1)コオイムシ
  コオイムシの生活史
1月2月3月4月 5月 6 月7 月8 月9 月10月11月12月

                    (成虫)---------------------------------------
                          (幼虫) ---------------------
                      (卵) -------     -----   ----

      -------------------         (越冬・冬眠)         ----------
 

(成虫)

  観察できた期間は5月26日〜12月6日までであった。個体数が多く見られた時期は,5月26日〜6月24日までの間が最も多く確認された。
(幼虫)
  観察できた期間は6月9日〜10月23日までであった。個体数が多く見られた時期は,6月9日〜6月24日までの15日間が最も多く確認された。
(卵)
 観察できた時期は5月26日〜9月18日までであった。発見した時の状況は雄の背に卵を乗せている状態であった。最も多く卵を乗せていた時には, 度に   個の卵が確認できた。5月26日〜6月24日までの間が最も多く確認できた時期であった。
(越冬・冬眠)
 尾山耕地において,成虫は5月,幼虫は6月から動き出したのが観察され,9月24日まで動いていることが確認できた。その後10月2日以降は,動きが弱まり11月27日には,土の中や石の下などで静止状態が観察されたことから越冬・冬眠に入ったものと推定した。
 
 表3―3 コオイムシの生息地の気温
********
    月  気温(平均) 日数(n=) (最大―最小)
  5 - - -
  6 24.8℃ n=12 (18.0−29.5℃)
  7 - -  -
  8  24.0℃ n=2 (22.0−26.0℃)
  9 21.0℃  n=10 (17.0−28.0℃)
10  20.0℃ n=2 (18.0−22.0℃)
11 8.0℃ n=2  ( 7.0− 9.0℃)
12 11.8℃ n=3  (11.0−13.0℃)

 11月27日に推定,越冬・冬眠に入ったことが確認された。概要は次の通りである。天気は晴れ,外気の気温は9度であった。前月の10月の平均気温が20度で範囲は18度から22度であった。冬眠に入った11月の平均気温は8度,範囲は7度から9度であった。(表3―3)。10月と比較すると平均気温でマイナス12度,最高気温で13度,最低気温で11度の気温の差が認められた。
 外気の気温が10度を下回ると冬眠に入るメカリズムが確認された。翌月の12月には,11月の気温を上回った。平均で11.8度,最高で13度,最低で11度と,いずれも11月より3.8度から4度高い気温であった。気温の上昇にも関わらず動き出すことはなかった。  
 調査の結果からもわかるように,急激な気温(10度以上)下がると体の動きが鈍り,越冬準備に入り,外気の気温が10度下回ると越冬に入るものと推定される。

2)モートントトンボ
  モートントトンボの生活史
1月2月3月4月 5月 6 月7 月8 月9 月10月11月12月
              (成熟/成虫)-----------
                     (未成熟) -------
                      (ヤゴ) ----

(成虫)

  観察できた期間は5月26日〜7月21日までであった。個体数が多く見られた時期は、6月20日〜6月30日までの間が最も多く確認された。
(未成熟)
  羽化したばかりの未成熟個体が観察できた期間は6月9日〜7月21日までであった。個体数が多く見られた時期は、6月11日〜6月24日までの約半月間の比較的短い期間に集中して見られた。 
(ヤゴ)
  ヤゴが観察できたのは6月16日〜6月24日までの期間であった。対象地の水田には対象種と近い仲間のアジアイトトンボと2種類の生息が確認されている。モートンイトトンボのヤゴであるかは不明である。
 

3)タマガムシ
  タマガムシの生活史

  1月2月 3 月4 月5 月6 月7 月8 月9 月10 月11 月12 月
 

               (成虫) 

                                             (越冬・冬眠) 
 

(成虫)
  観察できた期間は5月24日〜12月5日までであった。個体数が多く見られた時期は、6月16日〜7月6日、9月13〜17日までの間が最も多く確認された。
(越冬・冬眠)
  冬眠が正式に確認されたのは12月5日、畦の土の中で静止していたのを確認し、越冬状態を確認した。外気の気温は13度であった。

4)マメハンミョウ
  マメハンミョウの生活史

  1月2 月3 月4 月5 月6 月7 月8 月9 月10 月11 月12 月
 

            (成虫) 
 

(成虫)

  観察できた期間は9月1日、9月20日であった。対象種の生息状況は観察例が少なく、はっきりした生活周期は明らかにされなかった。

 
 
 


5)キベリマルクビゴミムシ
  キベリマルクビゴミムシの生活史

  1月2 月3 月4 月5 月6 月7 月 8月9月10 月11 月12 月
 

              (成虫) 
 

(成虫)

  観察できた期間は5月7日〜5月16日、6月7日、8月21日、10月23日であった。対象種の生息はトラップにより観察できた。観察例が少なく、はっきりした生活周期は明らかにされなかった。

 

 

第4章 保全対策


1.希少種対策

(1)道路建設「町道・農道整備事業」における希少種の生息への影響予測
 
 第三章の調査結果の貢で示したとうり,希少種のコオイムシモートンイトトンボタマガムシマメハンミョウキベリマルクビゴミムシ等5種は,当該地の水田地帯に強く依存し,その生息状況が明らかにされた。
 尾山耕地に道路が建設されることにより,道路幅の線としての環境が消失することは元より,周辺の環境,面としての広い面積を喪失することが懸念される。また道路による分断は,調査対象の昆虫類の生活に影響を与えることが予想される。特に飛翔能力の弱いイトアメンボ等への影響が大きいことが挙げられる。 
 さらに道路が建設されることによる影響として,水田,休耕田全体の乾燥化が進み湿地環境を主な生息場所としているコオイムシモートンイトトンボタマガムシ等3種に対する影響は想像以上のダメージを引き起こすことが十分考えられる。道路工事によってマイナス要因が発生した場合には,その要因を極力軽減し,少しでもプラスになるよう努力することが求められる。
 今後は個々に応じた対応が求められる。より具体的な対策を図る必要がある。

2.保護上の課題

(1)保護対策にあたっての前提条件
 

  • 希少性の高い種はその地域において,環境の多様性や得意な環境に依存しており,そこの地域での良好な自然環境が確保されることが生息に当たっての不可欠な条件といえる。また,環境の悪化や変化,警戒心が強く人為的な接触ことにより,生息地の破壊やその種そのものの生存が危ぶまれる。
  • 保護対策の検討に当たっては,対象地域における生息実態を的確に把握することが最も基本と言える。希少昆虫類は,個々の生活習慣や利用する環境等の違いから全域を均一に利用しているわけでなく,利用内容の重要性に応じて,最重要地域・重要地域・それ以外の地域に区分することが可能である。
  • 次に,道路建設を踏まえた保護対策のより具体的な検討が必要であるため,道路建設の全体計画の中でどのような工事の内容が希少昆虫類の生息に影響をおよぼす可能性があるのか,を的確に把握することが求められる。すなわち,道路建設工事に伴う,自然改変の位置・規模・内容や工期・工法等を整理し,保護上の必要条件との整合を検討し対策を具体化する必要がある。


以上 


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